顧客満足を引き出す「2次機能」の充実
(1)1次機能のみの経営からの脱却
多くの企業の活動は、「自社で作ったものを売る」「自社で考え出したサービスを提供する」という発想で事業をしており、競合に真似られたり、あるいは、競合他社と同じようなものを販売したりで、顧客から見た時に、それらの商品やサービスに違いがなく、顧客とすれば「安いものを買おう」ということになり、熾烈な価格競争に陥り、利益の上がらない事業を展開することになります。
このように「自社で作ったものを売る」「自社のサービスを提供する」という他社との際立った違いを見出せずに提供する商品やサービスを1次機能といいます。企業が1次機能だけで販売やサービスを続ける限り、他社との違いが見いだせず、価格競争に頼った経営となり、自社の体力を消耗させることになります。いわゆる戦略としての差別化の概念が全くない経営です。
(2)2次機能の充実で市場優位を築く
それでは、差別化について考えて見ましょう。差別化戦略とは、他社にはない特徴を持つ製品やサービスなどを提供することで、競合他社とは違う手法で競争する戦略です。つまり、差別化戦略とは、「競争しない競争戦略」の手法と見ることができます。差別化は製品の機能や技術的優位による場合もあれば、サービスやブランド・イメージによって確立される場合もあります。
差別化戦略は、製品やサービスの基本機能(1次機能)を強化することで差別化を図ることは勿論ですが、競争優位を確実に保つためには、基本機能(1次機能)+2次機能を強化することで差別化することが大切です。基本機能(1次機能)を強化するには技術開発力を強化することで独創的な競争優位を築くことが大切ですが、基本機能(1次機能)だけで長期間にわたり競争優位を確保することは困難です。そこで2次機能を強化することで長期間にわたる差別化を実現することが必要になってきます。
たとえば、アサヒビールが「スーパードライ」という味の基本機能で差別化し、優位性を築きました。アサヒビールがとった戦略は、2次機能を強化することで差別化を継続させることでした。このときの2次機能は、鮮度重視の配送システムという顧客がこのむ機能を2次機能として加えることで競争優位に立ちました。
このように差別化戦略は、技術革新による基本機能(1次機能)の強化に加えて2次機能を強化することで差別化を持続させることが大切です。また、差別化とは「顧客がその特徴・違い」を識別することであり、企業側が身勝手に考える差別化では市場で受け入れられません。