後継者を取り巻く環境の変化
企業を取り巻く環境の変化には、すさまじいものがあります。大きな潮流では全産業・社会・文化のグローバル化、市場全体の成熟化、情報革命の本格化、目覚ましい技術革新の高スピード化、国内にのみ目を向けると第三次産業の進展、少子高齢化の進展、規制の緩和、さらには行政の変化など、さまざまです。グローバル化の中では異文化との交流が市場全体にもたらされ、市場の成熟化ではニーズの多様化に伴い顧客価値の創造が大きくクローズアップされ、情報革命や技術革新のスピード化は全産業に大きな変革を強いてきました。さらに国内における第三次産業の進展は、あらゆる産業へのサービス産業化をもたらし、人の重要性がクローズアップされています。つまり、経営資源のより高い重要性がモノからヒトへ移行してきました。そして少子高齢化にともない、企業においては技術の伝承が大きな課題となり、また労働人口の減少という深刻な問題をもたらす一方で、政府による規制緩和が新たな競争市場を創出しました。さらに近年は新たな分野として、IoTやAIの活用が重視されAIによる労働力の代替化が大きくクローズアップされてきております。
このような環境の変化で先行きは全く不透明になり、事業予測が困難な状況になっており、さらに組織のいろいろな部分で不具合が生じ、多くの企業不祥事が表面化しています。さらに、過去30年間の日本の企業全体の平均の営業利益を見ると全産業ともに右肩下がりに落ちています。特に製造業においては、この30年間で10ポイント以上の営業利益率の低下があります。
このような先行き不透明な状態を企業にもたらし、さらには企業に多くの不祥事をもたらしている原因は、先に述べたような企業を取り巻く環境変化にあります。
戦後の日本の経済は、成長期、高度成長期、成熟期、再構築器という4つの段階で発展してきています。人財の活用においては、成長期・高度成長期は同質的人材であるのに対し、成熟期以降の現代においては異質的人材の重要度が高まり、企業内の組織においては安定的なピラミッド型の剛構造から水平型の柔構造へ、そしてマネジメント体制も終身雇用・年功制という全体管理から能力主義・成果主義という分権管理へと変化しています。
このような外的な要因とともに、一方企業における内部要因としては、企業における「戦略不全」と「理念の形骸化」という経営幹部に関わる内的な要因も大きく絡んでいます。従って、上記のような事業環境変化や内的な要因の下、今企業に求められているのは、「自らの信念や使命感に支えられた明確な理念を持つ次世代経営者」です。つまり、この時期ほど、経営幹部が経営理念に立ち戻り、自分たちの社会の一員としての使命は何か、を明確にし、さらに自分たちはどうなりたいか、というビジョンを明確にする必要性が求められている時期はありません。
経営理念には、その企業の使命(ミッション)とあるべき姿(ビジョン)が明確に示されているのです。明確に示された経営理念を組織に浸透させることで次世代経営者は、組織力を強化することができるのです。組織への浸透とは、「その理念が組織メンバーの行動になって現れること」を言います。従って、理念を組織に浸透させるには、理念にある「使命」を達成するにはどう行動するか、「ビジョン」に到達していくにはどう行動するか、を日々、組織メンバーに「問いかけ」、組織メンバーに「考えさせ」、組織メンバーに「行動させる」ことが大切です。