守るべき事業・顧客と育成すべき事業・顧客を明確に

次世代経営者の中には、先代が大切にしてきた事業を極端に嫌い、自分が代表に就任するや否やこれまでの事業とは全く違う分野に進出しようとするケースが結構、多く見られます。しかし、残念ながらほとんどが失敗し事業を閉鎖したり縮小したりという結果になります。次世代経営者が事業を引き継ぐときには、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)のフォーマットを活用して「守るべき事業」と将来の発展のために「育成すべき事業」を明確にして戦略的な事業展開を心がけるべきです。この際、二つのエリア(事業のエリアと顧客のエリア)でPPMのフォーマットを活用した戦略を考えることをお奨めします。

まず、事業(商品)のエリアでは、縦軸に市場の成長性をとり、横軸にその事業(商品)相対的市場シェアを取り、4つの象限を作り出し、それぞれ、「金のなる木」「問題児」「花形」「負け犬」として現在の儲け頭の事業(商品)を「金のなる木」にプロットし、そこから得られる資金を投入して次世代経営者がこれから伸ばしていきたい分野の事業(商品)を「問題児」にプロットした上でいかにして「花形」に仕上げるかを戦略的に考えます。さらに「負け犬」にプロットされた事業(商品)があれば、これを再吟味して、「問題児」の象限にもっていけるものと廃棄するものとに分類します。

また、顧客のエリアでは、複数年比較したうえで、縦軸に売上高の成長率を、横軸に売上総利益シュアをとり先ほどと同様に「金のなる木」「問題児」「花形」「負け犬」のそれぞれに既存の顧客を分類します。「金のなる木」の顧客は当社の資金源ですので大切に取引し収益の拡大を目指し、「問題児」の顧客については商品の改良やコスト管理の徹底などで利益の向上を目指し、「花形」の顧客は、より緊密な連携を取って顧客満足を確保して将来の「金のなる木に仕立て上げます。また、「負け犬」にプロットされた顧客については、当社との取引上のミスマッチがあると考えられますので、顧客ニーズの調査などを徹底してあらたな商品やサービスと開発し、「問題児」へと育成する努力をすべきです。特に老舗企業においては、「負け犬」の顧客が数多くあるので、これらを掘り起こすことで自社の成長につなげることが可能となります。