「税理士の活用」で伸びる会社

「社長、先月の実績が知りたいので、試算表を見せてくれませんか」「いや、まだ税理士から数字が上がってきていません」「えっ、今日は10月23日ですよ。9月の実績がまだ出てないのですか? いつになりますか。」「多分、月末までには・・・」これが私と支援を依頼してきた中小企業の社長との間で、よくあるやり取りです。

毎月の実績が翌月末にならないと判明しないとは信じられないことですが、残念ながら、これが多くの中小企業の実態なのです。これはまだよい方で、半年過ぎても月次の数字が判明しない企業が結構多いのです。

勿論、全てと言っていいほど、中小企業には必ず税理士が顧問として入っており、少なくとも、3万円から5万円の顧問料を毎月支払い、決算期にはさらにその6か月分程度を支払っています。しかも、ほとんどの場合、定番の会計ソフトに税理士事務所の職員がその企業の数字を入力して、いとも簡単に試算表を作成しているのに、何故、そのデータが中小企業に届くまでに、このように長い時間がかかってしまうのでしょうか。

多くの税理士にとって、中小企業は税務顧問先であり、単なる税務申告の手伝いをする先としか考えておらず、鼻から経営顧問としての意識はなく、企業を支援先などとは考えていませんので、企業側が催促しない限り迅速には動いてくれないのです。一方、企業側と言えば、社長自身が月次決算など頭にはなく、ただ一年間、懸命に働いて機械的に決算期を迎えるだけで、税理士の活用の仕方など全く考えたこともないのです。このように税理士側、企業側双方の対応に問題があるのです。

企業経営者であれば、当然、自社の年度経営目標は明確に持っており、それに基づいた月次目標とする数値も明確に持っていて当たり前です。しかし、現実には、そのようなものはなく、税理士がつくる書類を見ても前期との比較上の数値は存在したとしても、月次目標あるいは年次目標と比較する数値欄は見たことがありません。本来であれば、今月の実績は今月末に知るのが当たり前ですが、月次実績の処理をすべて税理士に任せている企業にとって、それは無理としても、翌月の初めには前月の実績表が手許にないと経営の改善を図ることなどできるはずもありません。

経営には長期的なビジョンはもちろん必要であり、健全な経営を続けるためには中期経営計画は必須です。中期経営計画に基づいて、単年度計画を作成し、単年度計画を達成するための月次計画を作成して、月次実績と月次計画を対比して、経営の微調整を図りながら、安定した経営実績を目指していくのが企業の本来のあり方です。

支援機関からの依頼で、神奈川県のある小売業A社を訪問しました。支援するにはその会社の経営状態を把握するために決算書に加えて直近の合計残高試算表が必要です。当然、先月末の時点での試算表の提示を依頼しましたが、訪問当日が28日であるにもかかわらず、まだ税理士から届いていません。やむを得ず、7か月前に終了した決算書を軸に決算日から訪問日までの状況をヒアリングして当期の概要を把握して支援をしました。この時、A社の社長に話したことは、中期経営計画の必要性とそれに連動した年次計画と月次計画を明確に作成して毎月、試算表に基づいて計画と比較し、計画を微調整しながら事業を進めることでした。この社長は、私の言葉を素直に受け止め、税理士に対し、毎月の実績データを翌月5日までに提出するよう依頼し、私の支援を受け、中期経営計画、年次計画、月次計画を作成し、月次決算を行うようになりました。いうまでもなく、業績は見違えるようによくなりました。