「経営感覚」で伸びる会社

「経営感覚」で伸びる会社

多くの社長に会うとよく、「うちの役員や幹部には経営感覚がない」といいます。その社長自身に、それとなく尋ねても「経営感覚とは何か」が具体的に見えてきません。それぞれの社長の「経営感覚」には、異なった意味合いがあるようです。

私は多くの企業を支援するにあたり、「経営とは借りずに手元のキャッシュを増やすために人を育て、人を活かし成果を上げること」としております。従って、経営感覚とは「日頃の事業活動を通じて、安定経営に必要なキャッシュを増やすかを考え行動すること」です。企業は増やした手元のキャッシュを使って新たな設備投資や研究開発投資をすることで永続的に発展していくのです。

経営感覚の無い人とは「お金や人、物を有効に活用できず無駄遣いをしてしまう人」を言います。このように考えると多くの社長が言う「うちの役員や幹部には経営感覚がない」という意味がよくわかります。つまり、彼らの考えや行動がキャッシュを生み出すことにつながっていないばかりか、逆に無駄な費用を生み出しキャッシュを減少させている、ことを言いたいのです。そう言う社長自身も、明確に経営感覚の意味を理解し、その経営感覚のもとに行動しているかとなると大いに疑問がわきます。

そのような経営感覚を身に着けるためには、社長や経営幹部自身が経営管理の手法を確立する必要があります。それには、経営管理の目的、経営管理の方法、そして経営管理の対象をしっかりと把握し理解した上で経営に臨むことが大切です。

自社の経営幹部や社員に経営感覚がない、とぼやいている社長は、しっかりとした経営管理をしているでしょうか。すでに述べたとおり、経営管理も「手元のキャッシュを増やすため」に行うのです。そのために、社長として毎日以下の4つを問いかけてみましょう。

1)事業の目的を達成するために必要な人材を育成できているか

2)自社が持つ設備や不動産などフル活用できているか

3)活きたお金の使い方が出来ているか

4)社長として周囲の変化に対応し、情報を手に入れる努力をしているか

さらに経営管理の手法にはサイクルがあります。つまり、事業計画をしっかりと立案し、それに基づいて全社でその達成に向けて取り組み、取り組んだ後は全員でその結果を話し合って改善策を考え、次に新たな事業計画につなぐというサイクルです。事業計画は5年程度の中期経営計画を立案して、大きなくくりで自社の5年後の到達点を考え、3年後の計画を具体的に定め、それに向かって初年度計画を立てるのが良いでしょう。実行に当たっては役割分担を明確にすることが大切で、それが自己管理を促し、能力の開発とやる気の向上につながります。

経営管理の手法のポイントをまとめると以下のようになります。

1)中期経営計画の策定(5年)

2)中間計画の策定(具体的な3年計画)

3)単年度計画の策定

中間のゴールは3年計画、最終ゴールは中期経営計画

4)部門、個人の担当役割を明確にする

5)単年度計画終了後、担当ごとに振り返り改善策を次の計画に活かす

そして、事業活動は社員が主体ですから、社長の経営管理とは、「社員を通じて企業目標を達成する」ことをその狙いとすべきです。社員自らが一丸となって企業目標達成に向かい、収益を向上させることでキャッシュを創出して会社を発展させていきます。ここに社員としての経営感覚の必要性があるのです。

さらに、経営管理のプロセス全てにおいて関係者全員の「キャッシュを増やす意識」は不可欠です。経営感覚としての「キャッシュの意識」が効率の良い事業成果を生み出すのです。