経営革新・拡大のカギ「コア・コンピタンス」

企業が存在しているのは、そこに社会の一員としての必要性があるからです。その必要性とは顧客の価値に通じるものでもあり、顧客に価値を提供できる自社にしかない核になる能力にその根源があります。この核になる能力をコア・コンピタンスとよび、発展する企業はこのコア・コンピタンスを明確に把握して、環境変化に合わせて市場が求める商品を次々と生み出していっています。コア・コンピタンスは「顧客に対して、他社に真似のできない自社独自の価値を提供する企業の中核的能力」と定義され、「顧客に特定の利益をもたらす一連のスキルや技術」ということになります。自社のコア・コンピタンスは何でしょう。後継者としては明確に把握しておく必要があります。この自社に潜在するコア・コンピタンスを活用してあらたな商品・サービスを創出し、自社ブランドとして育てていくのも後継者の大切な役目です。

アンゾフの成長ベクトルによれば、成長戦略(市場浸透戦略、市場開発戦略、製品開発戦略、多角化戦略)によって4つの方向性を示しています。このうち、後継者としては、まず、現在の製品・市場でシェアを高める市場浸透戦略、今の製品・サービスを新たな市場で展開する市場開発戦略、現在の市場に自社のコア・コンピタンスを活用して新たに創りだした製品を売り出す製品開発戦略の三つを採用すべきです。いきなり、これまでの事業シナジーの無い多角化戦略を採用するのは危険であり、事実、後継者が先代の事業や製品を嫌い、いきなりシナジー効果の無い多角化に打って出て、失敗する例は数多く見られています。どうしても多角化戦略をとる場合には、何かのシナジー効果が期待できる関連多角化にとどめるべきです。

コア・コンピタンスとは、

「顧客に対して他社には真似のできない自社独自の価値を提供する企業の

中核的能力で、顧客に特定の利益をもたらす一連のスキルや技術

と定義されます。言い換えれば、「自社にとっての持続的競争優位の源泉」となります。従って、企業が競争力を高め本来の目的を達成していくためには、自社のコア・コンピタンスを明確にして、自社独自の商品作り、サービス作りに生かし、市場の中で競争優位を確立していく必要があります。

戦略策定のアプローチから、この3要素の関連を見ると

製造業:保有している自社のコア・コンピタンスを活用して事業ドメインや市場機会を探索する

サービス・流通業:市場機会や顧客ニーズから事業機会を探索し、適合するコア・コンピタンスを整備する

経営戦略の策定の際の三つの視点として、「事業ドメイン」、「コア・コンピタンス」、「市場機会」があり、コア・コンピタンスはその一つの視点として位置づけられる重要な要素です。コア・コンピタンスに基づく市場の選択、コア・コンピタンスによる製品の差別化、コア・コンピタンスへの経営資源の集中を経営戦略策定時には考慮することになります。