組織力を見直す
組織のトップの方に質問です。「集団の能力は常に個人的な能力の合計(総和)である」は正しいでしょうか。
社長が一人で頑張ったところで成果はたかが知れています。社長が組織力を活用して事業を展開すれば、自ずと大きな成果が得られるようになります。
一人親方で仕事をしていたとき、100の仕事をこなしていたが、忙しくなったので人を一人増やして仕事をしたら、これまでより多い、150の仕事ができた。つまり、一人でやっていた時の仕事の1.5倍になったのですが、あれ? 一人当たりの仕事に換算したら、明らかに効率が悪くなっています。これは多分、追加の一人がまだ、仕事をよく知らないために貢献できていない結果でしょうから、1人前の仕事ができるように教育をする必要があります。
教育をした結果、対象の一人の能力が上がり、2人で200を超える仕事ができるようになれば、組織を発揮したと言えるようになります。つまり、組織とは1+1=2ではなく、相乗効果を得て1+1≧2にならないといけません。つまり、組織メンバーの力を合わせていつも、メンバー数≦成果を上げるのが組織力の発揮なのです。従って、冒頭の質問お答えは「X」となります。
しかし、現実に企業の支援で多くの組織を見ていると果たして1+1≧2になっているか甚だ疑問です。社長の管理がうまくいかないために社員のやる気が低下して、1+1≦2あるいは、1+1≦0.8、などになっているようなケースが数多くみられます。これは組織ではありません。社長や幹部の適切な管理が、いかに大切かがわかります。
経営者は常に組織力が発揮できるように仕事遂行の仕組みを作り、効率的な仕事ができ、「メンバーの能力の和≦成果」となるような相乗効果を考えた管理をすることで組織を活性化させることが大切なのです。
社長として組織を活性化させるためには以下の三つの要件を抑えて経営管理をするとよいでしょうか。
1)自社のゴールは明確で社員と共有できていますか
先ず、組織には、いわば「組織のゴール」となる「組織共通の目的」が必要で、社長はこれを明確にした経営をすることが大切です。長期的には、社長の理念に基づいたビジョンや中期的には「中期経営計画」などがそれに当たります。
2)社員は皆、同じ方向に向かって突き進んでいますか
二つ目は、「協働意欲」の喚起です。これは「貢献意欲」ともいわれ、「みんなで同じゴールに向かって企業の業績向上に貢献しよう」という力で「組織力の結集」です。この力は明確な「組織共通の目的」である組織のゴールが共有されていないと発揮されません。組織力を高めるためには、要所々に社長と同じ価値観を持つ幹部を創り上げることも大切です。社長と同じ価値観を持つ幹部であれば、社長の意思や行動を即座に理解できますので、末端まで社長の考えが浸透しやすくなり、盤石の組織となります。これをせずに、社長一人が力で組織を押さえようとすると「物言わぬ集団」が出来上がり、組織のあちこちで問題が山積し、いずれは破たんすることになりかねません。労働意欲を喚起するためには、上に立つ者から部下への「褒め言葉」が不可欠です。
3)社長は「聴く耳」を持っていますか
三つの目は、「コミュニケーション」です。コミュニケーションは組織を人体に例えれば、組織の血液であり、コミュニケーションとしての新鮮な血流が組織内に流れていないと組織は壊死してしまいます。組織内のコミュニケーションを円滑化させるためには、常日頃から社長が「聴く耳」をもっていることが必要であり、社長が「聴く耳」を持たないと社内の末端情報が社長に届かず、突然、不測の事態に陥ることになりかねません。「聴く耳」を持つとは、社長が相手の立場に立って、聴くことが出来るかどうかです。
組織を強化して組織力を発揮させるためには、社長自身がこの三つの要素をしっかりと押さえて、組織全体を活性化させ、相乗効果を発揮させることが大切です。