債権管理で伸びる会社
債権とは他人に一定の行為を請求する権利と定義づけられていますが、企業には様々な債権が貸借対照表上の借方の欄に明記されています。これらの債権はすべて将来、自社の資金に還元されるものですが、別の見方をすれば会社の資金が「寝ている」状態でもあります。
会社の債権を考えるとき、一番先に取り上げられるのが売掛金や受取手形などの売上債権でしょう。商品やサービスを取引相手である顧客に提供し、その代金を代金引換でなく、一定期間後に受け取る約束をした売掛金やその売掛金を現金でなく手形で受け取った場合に発生する債権を売上債権といいます。
栃木県のA社と顧問契約をして支援を開始しました。業歴30年を超える会社だけに取引相手企業も多く、売上債権の件数も膨大です。売上高に比し、売上債権が多いと感じ、売掛金台帳を見ると懸念した通り、個別管理がなされておらず、売上高の発生と入金が記帳されているだけで、いわゆるどんぶり勘定の売掛金管理になっていました。そこで、「取引先との売掛金の残高確認はしていますか」と尋ねると、残高確認の意味さえ理解できない状況でした。そこで取引先債権残高確認書のフォーマットを示し、確認の目的や実施方法を説明するとようやくその必要性を理解したようで、早速、取引先との残高確認を実施することにしました。
対象となるのは、2億円強の売掛債権でしたが、まず社内での売掛金残高明細表を作成するのが大変でした。総額はわかっているのですが、個別の入金時の消込ができていないために、どの売上分が入金してどの分が未入金なのかが全く不明なのです。この内容が不明だと相手から問い合わせがあった時につき合わせができないので、必死の作業の結果、一応形になりました。
確認書発送から2か月ほどかかり、ようやく一通り残高の確認をすることができました。その結果、回収できない売掛金が約600万円発生しました。取引先がなくなっていたために確認できない取引先もありましたが、ほとんどが返品処理や値引き処理がなされていないために生じたものでした。
これを機会に社内において勉強会を行い、売掛金回収の責任は販売した営業部門にあることを明確にし、さらに、その営業を支える営業管理部門が毎月締め後の顧客別売掛債権明細表を作成して各担当に渡し、営業・管理双方部門の協働でしっかりとした債権管理体制を築けるようにしました。また、債権管理上、個別管理ができるよう営業の受注番号と管理部門の台帳の整合性も取れるように仕組みも再構築しました。
会社の債権は売上債権だけでなく、そのほかにもいろいろあります。棚卸資産の中でも、自社の棚卸資産を下請けや倉庫など他社に預けていれば、これも明確な債権ですので、しっかりした管理が必要です。実地棚卸を実施する場合には、自社の資産預かり先から、預かり証明書をとることでその所在が明確になります。
会社の債権はこのほかにも、貸付金や仮払金などとして存在します。これらの債権も相手先とのしっかりとして帳票を作成して管理し、決められた期日には必ず回収することが大切です。
債権は「資金化されていない自社の資金」です。しっかりとした管理のもと、早期回収につとめ、全体的な資金負担を軽減することが債権管理の目的です。健全な企業ほど、しっかりした債権管理の仕組みが出来上がっているものです。