マクロ環境で成長する
社長であれば常に自社の成長を考えて行動しているはずです。自社を成長させるために、非常に大切な要素として社長自身の周囲の環境の変化を捉える能力があります。特に環境変化の激しいこの時代においては、周囲の環境変化をうまくとらえて自社にとっての新たな事業機会を発見し事業に取り入れると同時に、自社の発展にとって弊害となる要因をいち早く発見し回避する対策を講じる必要があります。このように周囲の環境変化を見るときには、何の切り口も持たずに、単に「外部環境はどう変化しているか」を知ろうとしてもその対象が大きいだけに、なかなか、うまく状況を捉えることが出来ません。しかし、周囲の環境をいくつかの切り口でみるとよく見えるようになります。つまり、「法令、政治、政策面での新たな変化」「経済の状況はどういう状況だろうか、デフレなのか、インフレなのか」「社会の状況の特徴は何だろうか」「どのような分野で技術の進歩や発展がみられるだろうか」という4つの視点です。
これをわかりやすくするために、日本の社会において、成長期、高度成長期には存在しなかった中古ビジネスが、なぜ、成長してきたのかを考えてみましょう。ここに多くのビジネスのヒントが隠されており、その背景には様々な外部環境の変化があります。
成長期、高度成長期には高かったモノの価値が、成熟期、再構築期となった時代には下落しました。つまりデフレ経済の時代になったのです。モノの価値が下落したデフレ時代に入ると社会は安いものを求めるようになります。そして社会は地球環境保護の名のもとに環境が重視され、リササイクル、リユースの時代に突入し、それを後押しするための法律としてリサイクル法などが新たに登場してきます。その結果として、「中古でもよいものはよい」という意識が社会の中に芽生え、中古ビジネスが確立されてきたのです。もちろん、その背景には自動車を筆頭に日本の技術の進展に伴う製品の長寿命化があることも必須要件です。
これらを体系立てて整理してみると、中古ビジネスの後ろ盾となっている法令としての「リサイクル法」があり、また、モノの価値が下落した「デフレ経済」の存在を見逃せません。さらに地球環境保護が叫ばれ、「捨てる文化」から「リサイクルして再利用する文化」が社会の中に芽生え、再利用を支えるための日本企業が提供する「製品の長寿命化」があります。
今の日本の状況をこの4つの切り口で分析してみるとどうでしょうか。
・政治・政策面ではアベノミックスで歴史的な超円高の時代から円安へ大きく変化しています。
・経済状況の面では、緩やかなインフレを求めて長期間続いたデフレ経済からの脱却が進んでいます。
・社会面では、安いものに飽き飽きした時代になり、これまで市場を席巻していた輸入品の安ものに一服感があります。
・技術面では、IT分野や医療関連分野に目覚ましい進歩があります。
多くの経営者は、今進んでいる円安の状況を「輸出は有利になるが、輸入はコ
スト高で採算が合わなくなる。そこで輸出へ力を入れたいのだが輸出できる商
品がなくうまくこの変化に乗っていけない」と考えます。
果たして経営者として、この考えで十分なのでしょうか。なぜ、輸出する商品
がないのであれば、輸入との関連を考えないのでしょうか。輸入品が高くなる
のであれば、その輸入品にとって代わるものを日本で製造できないか、と何故、
考えないのでしょうか。これが考えられれば、そこに新たなビジネスの芽が芽
生えてくるのです。
長野県のA社の社長は、精密機械専門の製造業で、一定領域でトップにある中小企業です。これまで続いた円高経済のために大量に使用する部品であまり精度を要求されないものは不良品があっても、海外調達に切り替えてきました。しかし、昨今の円安状況を見て、この海外調達をすべて日本国内調達に切り替えることで、製品を構成する部品のすべてが日本製となり、自社製品がさらにハイレベルな評価をもらえるようになり、事業の発展につなげることができたのです。
このようにマクロ情報の活用は、自社に新たなビジネスをもたらすのです。