問題を把握する
問題が存在しているということは、その問題を解決しなければならないということです。では、問題はどういう時に起こるのでしょうか。たとえば時速60km制限の道を100kmで走行したとします。この時の基準は60kmですから40kmもオーバーしているので問題といえます。このようにある基準と照らし合わせた時に、その基準から逸脱している、ズレていると判断した時、問題という捉え方をするのです。
問題とは基準とのズレのことを言います。企業における基準とは、その企業のあるべき姿=ビジョンです。
あるべき姿は描いただけでは実現できません。このあるべき姿は、あくまでも「こうしたい」「こうなりたい」という想いであり、目指そうとする方向性ですから、その実現に向けての取り組みが必要になります。職場では、ただ、やみくもに取り組むのではなく、常に効率的・効果的な行動を通して結果が求められます。つまり、あるべき姿を実現するためには、何に取り組むのかというテーマである課題を明確にする必要があるのです。
課題を設定するといっても、あるべき姿に対して直接課題を設定するのっではなく、まずは描いたあるべき姿を実現するためには何が問題なのかを把握することが大切になってきます。問題とは先に見たとおり、ある基準と現状とのズレです。つまり会うべき姿を描いただけでは、問題を把握することはできないのです。問題を把握するためには、あるべき姿に対して現在はどのような状況なのかという現状のレベルを検討することが必要になってきます。そして、あるべき姿を現状と比較することで、はじめて問題を把握することができるのです。つまり、職場のあるべき姿がこういう基準であり、その基準に対して問題を把握するためには、「現在の職場はどのようになっているのか、どういう状況にあるのか」といった現状を客観的に判断する必要があるのです。
あるべき姿と現状とのズレ(ギャップ)が問題ですが、問題を安易にとらえてしまうと場当たり的な対応となったり、現状をより悪化させてしまったりする恐れがあります。ここでは問題を把握するポイントを考えてみましょう。
(1)問題の根拠を明確にする
ある判断をするとき、そこには判断する根拠(理由)が存在しているはずです。問題を把握する場合でも同様に「これが問題だ」というからには問題とする根拠が存在しているはずです。この根拠が曖昧だといくら取り組んでも問題を解決できないばかりか、解決したところであるべき姿の実現はあり得ません。問題を把握する場合には、表面的に問題を捉えるのではなく、何故、それを問題にしたかという根拠も一緒に検討することが重要です。
(2)問題を事実と共にとらえる
普段、活動を行っている中で本当はそれほど大きな問題でないにもかかわらず、これが問題だと決めつけてしまうことがよくあります。これは自分の考えが絶対だという思い込みからくるもので、問題となる事実を捉えていないからです。問題を把握する場合は、どういうことが起こっているからだという、問題の裏付けとなる事実を捉えることが大切です。
(3)問題の原因を探る
問題に取り組んだ時、問題とする「焦点や解決の方法が違ってしまっている」ことで問題を解決できないことがあります。こうしたことが起こる背景としては、問題を表面的にしかとらえていないということが考えられます。つまり、そこには問題となる(問題とする)原因が潜んでいるにもかかわらず、その原因をしっかりと把握していないということが言えるのです。この原因を突き止めなくして、一生懸命問題を解決しようと取り組んでも、問題を解決することはできません。
問題を把握する場合には、なず、問題を捉え、次にその原因を多面的に検討することが大切です。
(4)問題を整理する
問題は決して単独で発生しているのではありません。問題によっては、取り上げた複数の問題を一つにまとめることが可能だったり、また、ある問題を解決することで、別の問題も解決できたりすることがあります。
把握した問題の関係や関連などを整理することも大切です。