経営戦略の構成要素(1)
事業ドメイン
自社がかかわりを持つ事業の範囲をドメイン(事業領域)といいます。ドメインは環境によって規定される部分も大きいが、企業が主体的にデザインすることもできます。企業の存続、発展のために事業ドメインを明確にすることが必要です。
同じような事業をしている企業でも、ドメインが大きく異なる場合があります。ドメインは記号が将来進むべき「戦略領域」という意味合いを持ち、「対象市場」「顧客ニーズ」「自社の技術・能力」の3点によって定義されます。たとえば、食品メーカーにおいても、一般消費者か、飲食品店を顧客にするのかによって異なるし、顧客が和食を嗜好しているか洋食を嗜好しているか、自社が持つ製品加工技術・販売技術などによっても事業に異なった広がりが出てきます。このように、ドメインをどのように定義、デザインするかによって、企業の活動、進むべき方向性は大きく変わってくるのです。
ドメインの定義には物理的定義と機能的定義があります。物理的定義は、提供する製品の種類・内容、取引先、顧客などのリストです。企業の現状は、この物理的定義によって表現することが出来ます。
ただし、戦略的展開を考えるには、ドメインの持つ機能の意味的広がりである機能的定義が重要です。この機能的定義が狭いと、事業の発展が手詰まりになってしまいます。よく挙げられる例ですが、アメリカの鉄道会社が自らを「鉄道事業」という狭い物理的定義でとらえ「輸送事業」という機能的定義でとらえなかったために、自動車、トラック、飛行機といった代替輸送手段に市場を奪われたと言われています。